媛を幸せにしてくれるコート。
コートとの出会い。
そのコートとの出会いは本当に突然でした。
何か着るものでも見ようと立ち寄った池袋のファッションビルで、今の媛のココロ模様にぴったりのコートが待っていたのです。
媛は初めてそのコートを見た瞬間、思わずパッと自分の表情が明るくなるのを抑えることができませんでした。
コートを新しくしたいと思ったきっかけ
媛は2019年3月に会社をやめてフリーになりました。
それまでは外回りの営業のお仕事だったのでコートは地味でかっちりとした印象のものを選んでいましたが、2019年の冬からはそのような縛りはなくなって、自由にコートを選べるようになったのです。
「コート、新しくしようかな」
ある日、ふっとそんな風に思ったのを覚えています。
会社をやめて初めて迎える夏のセールから、少しずつ着るものが今の自分に合ったものに変化してきていました。
具体的には最初のブログにも少し書いた通り、成長した媛のココロに見合った今までより少し大人なテイストの服を選ぶようになったのです。
クローゼットの中には、今の自分に似合うけれどもう10年以上も袖を通した古着のブラウンのコート、仕事で使うためパンツスタイルに合わせようと買ったプリーツの入った裾が可愛らしい黒のコートの2着が入っています。
媛は会社をやめてから、デニム以外のパンツをはくことはほとんどなくなっていました。
今気に入っているスカートスタイルに似合うような素敵なコートがあればいいと思いましたが、その時はまだそれほど強い想いではなかったような気がします。
コートの下見
どんな洋服を買う時でもそうですが、媛はあてどもなくぶらぶらと、あちこちのお店で下見をします。
何を買うかもどこで買うかも決めずにただひたすらこれだ!と閃くお洋服を探すためにさ迷い歩くのです。
(そうすると結果的にその時自分のココロを射抜いたアイテムがコーデの要になります)
媛は一度お洋服を買ったお店で2着目を買うということはめったにしませんが、下見だからと去年トレンチコートを買って大成功だったレディアゼルさんへと足を踏み入れました。
すると店内に入ってすぐの所に下がっている、とあるコートが目に飛び込んできたのです。
「!?」
そのコートは明るいベージュの生地に深緑のベルトという個性的な配色はもちろん、マントを羽織ったような形がとても媛にとって魅力的でした。
おそるおそる札を見てサイズを確認すると、ちゃんとSサイズがあります。
下見なので試着まではしませんでしたが鏡に向かって当ててみると、自惚れかもしれませんがまるで媛のために誂えたかのように似合う!と思いました。
その時初めて強く、新しいコートがほしい、このコートがいいという思いが芽生えたのです。
クリスマスの前に
媛は下見の時は広くたくさんの洋服を見ることに決めているので、そのコートがとても気に入りはしたのですがすぐに購入はしませんでした。
しかし日に日に思いは募り、ネットで検索をかけてそのコートの写真を眺めるようになります。
(おかしいようですが、媛は心からほしい洋服ができるとよくこのような行動を取るのです)
ついにクリスマス前あたりにちょうど友達もつきあってくれるとのことで、そのコートを再び見に行く機会ができたのです。
期待で胸をふくらませてレディアゼルさんに足を踏み入れたのですが、前回あれだけ魅力的に思えたコートを再び見た瞬間、なぜかあまりいいとは思えませんでした。
そして同じ形のベルトも含めて全部黒いコートも隣に下がっていたため、今クローゼットにあって気に入っているのが茶色いコートだしこちらにしようかな、と目移りすらします。
しかしそれに猛反対したのが一緒についてきてくれた友達でした。
媛が念のためにと黒とベージュ両方試着したのを見て、ベージュの方が媛に似合うとかなり強く主張してきたのです。
その友達はとてもファッションセンスが良いので、選ぶものに間違いはないと媛も信頼してはいましたが、ここまで強く反対されるとは思ってもおらず、本当に驚きました。
しかし、洋服に関しては必ず自分で選ぶと決めていたはずの媛のココロにふと、
「友達の言うことを聴いてみよう」
という気持ちが沸き起こってきたのです。
こんな経験は今までなかったので、とても不思議な気持ちでした。
結局媛の手元にやってきた新しいコートは、ベージュのコートの方だったのです。
幸せを呼ぶコート
その後新しいベージュのコートを着て試しに外出してみたら、不思議なことがいくつも起こりました。
友達に会うと、
「とってもいいよ、そのコート」と褒められます。
写真家の先生にお会いしたら、
「まぁ、媛ちゃん可愛いの着たのね」
と声をかけていただきました。
地元の見知らぬ洋服屋の店員さんにまで、
「あらお嬢ちゃん、かわいいコート着て。ちょっと見せてみて」
とお声がけいただきました。
媛がコートを着たままくるりと回ると、その店員さんはとても微笑ましいといった感じでどこのコートか詳しく聴いてくださったのです。
とにかくこのコートはどこに着ていっても、誰にお会いしても話の種になるようです。
そればかりか、媛に似合う、可愛らしいとありがたい言葉をたくさんかけていただくことができます。
着るたびに媛のココロを幸せにしてくれるコート・・・そんな洋服との出会いがあるなんて、媛は想像したことがありませんでした。
あの時友達の言うことを聴かずに黒いコートを買っていたら、きっとこうはならなかったでしょう。
そう考えると、友達があの時コートを買うのにつきそってくれたこと、ベージュのコートの方が良いとあんなにも言い張ってくれたこと、全てにしみじみと感謝の気持ちが湧きおこってきました。
1着のコートが媛のココロにもたらしたものは、こんなにも大きな幸せだったのです。
コートと媛のその後
今でもベージュのコートに袖を通すたびに、見知らぬ方と会話が弾みます。
お洋服がとても好きな若い店員さん。
ふと通りがかった近所のおばあちゃん。
声をかけていただくたびに、皆さんの暖かい心と、ファッションの持つ無限の力を感じます。
寒い冬でも、媛のココロはこのコートの力で、すぐにポカポカと暖まるようです。
どうかこれを読んだ全ての方に、幸せを呼ぶ洋服との素敵な出逢いがありますように。